
10月24日
今までもちょこちょこデジタル処理はやっていたが、1冊丸まるデジタルで仕上げたのはこれが始めてなので、得られた印象を記しておく。
まず重要なのは、デジタル化したからといって、別に原稿の枚数が減るわけではないという事だ。
商業漫画として読者から金が取れる水準に画面を仕上げるためにはそれなりの作業量が必要で、だからデジタルでもアナログでも総作業量はたいして変わらない。それに掛かる時間も大差ない。
にもかかわらず、デジタル処理は速い。同程度の画面処理ならば、明らかにアナログトーン仕上げよりも速い。
実はデジタル仕上げでは、「作業時間」ではなく、「思考時間」が短縮されるのだ。
たとえば、画面のある部分に、濃度25%の影を付けたい場合があったとする。
アナログトーンならこう考える。
むう…。アナログトーンには25%なんて濃度の網点トーンは無いしなー。
実はこんなところ、20%でも30%でもいいんだけど、30%は同じ画面の別のところに使っているから、できれば使いたくないんだよなー。
そうだ、砂目トーンなら濃度は25%だな。でもここに砂目を貼ると不要な質感表現が付加されてしまうしなー。
まてよ、ここは光の加減からいって、グラデーショントーンでも代用出来るぞ。でもこんなどうでもいい所に新品のグラデトーンを使うのはもったいないなー。昔使った奴の切れ端が残っていないかなー。
そこでトーンケースをがさごそ探し始める。
ああだめだ、少し短い。こっちは濃すぎる。といって薄いところは利用価値が高いから、とっくに使い切っちゃったんだよなー。
こんなことなら、ペン入れのときに質感を描き込んでおけばよかった。あん時はトーンで何とかしようと思っていたんだっけ。
で、結局、20%を貼る。
デジタルだと、上記の思考過程が全て無くなる。
単に「25」と数値入力するか、スライダーバーを25あたりにもって行けば終わりだ。
正確に25である必要すらない。24でも26でも、その辺は大雑把でいいのだ。
現状で充分なスピードが出ている人や、充分な量のトーンが買える人は、だからあわててデジタル化する必要は無い。デジタル化それ自体は出版界の趨勢でも、長い時間が掛かる事だ。
でも、トーン代を少しでも減らしたい、とか、どうも仕上げに時間が掛かる、と考えている人は、デジタル化を考えてみる価値はあると思う。
スポンサーサイト
コメントの投稿